<麻疹、はしか>
Measles


 まず、はしか(麻疹)が大流行していることは皆さんご承知のことと思います。それに関連したニュースから。

15歳以上はしか、患者数1週間に82人で過去最高
6月5日20時13分配信 読売新聞


 首都圏を中心に流行している15歳以上のはしかの患者数が、5月21〜27日の1週間に82人報告され、1999年の調査開始以来、最多だった前週の68人をさらに更新したことが分かった。

 国立感染症研究所が5日、公表した。

 調査は全国450病院に絞ったもので、東京都は前週の21人から23人(調査機関当たり0・96人)に、神奈川県は7人から10人(同1・11人)に増えた。また、宮城県が8人から15人(同1・25人)に増えたほか、北海道や大阪府などでも患者が確認され、感染が全国に飛び火している実態が浮き彫りになった。

 同研究所では「修学旅行で地方から関東に来る生徒が多い時期なので注意してほしい」と呼びかけている。

<記事引用>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070605-00000012-yom-soci


<はしか>休校・閉鎖は103校 6割以上が高校・大学
6月4日20時14分配信 毎日新聞


 厚生労働省は4日、はしか(麻疹(ましん))の集団感染に伴う学校施設の対応を初めてまとめた。4月1日から5月26日までの間に78校が休校、25校が学年・学級閉鎖した。休校などをした103校のうち33校が高校、31校が大学で、15歳以上の「成人麻疹」の流行を裏付けている。
 休校などをした学校は19都道府県にあり、東京都が過半数の56校を占める。約4分の3が関東地方に集中する一方、北海道、関西地方、福岡県でも局地的に集団感染があった。103校の患者数は1264人で、東京都が801人、千葉県が148人、神奈川県が77人だった。

<記事引用>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070604-00000079-mai-soci


大流行で怖いですねぇ・・・でも病院で働く私たちは麻疹の危険にされされている事をお忘れなく!
麻疹の情報を載せておきますのでご参考に!

@麻疹はどのように感染する?

麻疹は麻疹ウイルス(Paramyxovirus科 Morbillivirus属)によっておこる感染症で、人から人へ感染します。感染経路としては空気感染のほか、飛沫感染や接触感染など様々な経路があります。感染力はきわめて強く、麻疹の免疫がない集団に1人の発病者がいたとすると、12〜14人の人が感染するとされています(インフルエンザでは1〜2人)。

不顕性感染(感染はしても発病しない=症状がでない)はほとんどなく、感染した90%以上の人が発病します。発病した人が周囲に感染させる期間は、症状(A)が出現する1日前(発疹出現の3〜5日前)から発疹出現後4〜5日目くらいまでで、学校は解熱後3日を経過するまで出席停止となります(麻疹は、学校保健法に基づく第二種学校伝染病に指定されており、学校をお休みしても、欠席扱いにはなりません)。なお、感染力が最も強いのは発疹出現前のカタル期です。

A麻疹にはどのような症状がありますか?

麻疹ウイルスの感染後、10〜12日間の潜伏期ののち熱や咳などの症状で発症します。38℃前後の熱が2〜4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなります。

乳幼児では消化器症状として、下痢、腹痛を伴うことも多くみられます。発疹が現われる1〜2日前ごろに頬粘膜(口のなかの頬の裏側)にやや隆起した1mm程度の小さな白色の小さな斑点(コプリック斑)が出現します。コプリック斑は麻疹に特徴的な症状ですが、発疹出現後2日目を過ぎる頃までに消えてしまいます。また、口腔粘膜は発赤し、口蓋部には粘膜疹がみられ、しばしば溢血斑を伴うこともあります(上気道炎症状や結膜炎症状をカタル症状といい、以上を「カタル期」あるいは「前駆期」といい、「潜伏期」とは異なります)。

その後、熱が1℃程度下がり、その後半日くらいのうちに、再び高熱(多くは39℃以上)が出るとともに、発疹が出現します。発疹は耳後部、頚部、前額部から出始め、翌日には顔面、体幹部、上腕におよび、2日後には四肢末端にまでおよびます。発疹が全身に広がるまで、高熱(39.5℃以上)が続きます。発疹ははじめ鮮紅色扁平ですが、まもなく皮膚面より隆起し、融合して不整形斑状(斑丘疹)となります。指圧によって退色し、一部には健常皮膚が残っています。次いで暗赤色となり、出現順序に従って退色します。この時期には高熱が続き、カタル症状が一層強くなります(以上、「発疹期」)。

発疹出現後3〜4日間続いた熱は解熱し、全身状態、元気さが回復し、カタル症状も次第に軽快してきます。発疹は黒ずんだ色素沈着となり、しばらく残ります。合併症のないかぎり7〜10 日後には主症状は回復します(以上、「回復期」)が、リンパ球機能などの免疫力が低下するため、しばらくは他の感染症に罹りやすく、また体力等が戻って来るには結局1ヶ月位を要することが珍しくありません。

このように、麻疹の主症状は発熱が約1週間続き、カタル症状も強いため、合併症がなくても入院を要することが少なくなく、回復までには時間のかかる重症の病気といえます。

B麻疹の予防方法について教えてください。マスクをすれば防ぐことができますか?

麻疹は、接触感染、飛沫感染、空気感染のいずれの感染経路でも感染します。麻疹ウイルスの直径は100〜250nmであり、飛沫核の状態で空中を浮遊し、それを吸い込むことで感染しますので、マスクでの予防は難しくなります。唯一の予防方法は、ワクチン接種によって麻疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことです。また医療関係者の皆さんは空気感染に対する予防策をとることが重要になります。

麻疹の疑いのある患者さんが来院したら、サージカルマスクを渡す・外来なら他の患者さんと隔離する・入院患者なら個室管理にする・医療スタッフはN95マスクを着用する、などの対策が必要です。

このページをご覧の患者さんもこういう病気が大流行することを防ぐために隔離などさせていただきますので、ご理解とご協力をお願いします<(_ _)>




<はしか対策、茨城に学べ 昨年教訓、集団感染ゼロ 患者1人で即会議 学習塾にも通知>

全国ではしか(麻疹(ましん))が流行するなか、昨年の集団感染を教訓に、迅速な対策にかじを切った茨城県と東京・葛飾区は今年、集団発生の封じ込めに成功している。  各学校で患者が1人発生した段階で、関係者が速やかに情報を共有し、対応を徹底する作戦を実践しており、国立感染症研究所が封じ込めのモデル対策として紹介するなど、注目を集めている。  茨城県では、昨年、県南部の学校を中心にはしかが集団発生。一つの保健所管内で患者数が100人近くになったところもあった。県は、この教訓をもとに昨年「麻しん患者発生時の対応マニュアル」を作った。

<茨城県のはしか対策システム>

患者が1人出るたびに、校医や保健所、教育委員会の三者が情報共有のための対策会議を開催し、患者の症状の把握、予防接種の呼びかけ、職員、生徒の検温を実施。熱があった生徒には欠席を促すなど指導した。調査表を使って発症2週間前からの行動範囲を聞き取り、患者の了解を得て、接触した可能性のある学習塾や習い事の教室などでも注意を呼びかけた。

 その結果、4月以降、大学、小中学校など県内で約100人の患者が出たが、学校など同じ集団内で3人以上の患者が出る「集団感染」はゼロ。県の担当者は「ほぼすべての患者が把握でき、感染経路もつかめる」と話す。感染研は、茨城県のマニュアルは有効な対策になるとして、ホームページで紹介している。

 一方、茨城県とJR常磐線でつながる葛飾区は、昨年の同県の集団感染を契機に対策を強化し、区医師会の主導で、関連機関の情報共有が進んだ。区教育委が昨年6月、はしか患者が1人発生した段階で学校から教育委員会に「全数報告」を求める異例の通知を出したことで、患者の把握ができ対応がしやすくなった。学校、保護者の協力も得られ、5月31日から希望した小・中学生73校約900人に集団接種を開始している。

 はしかは感染症法上、すべての感染者を報告する義務はなく、1週間ごとに決まった施設ごとに発生動向がまとめられているが、感染力が強く、感染してから発症までの潜伏期間が10日程度と長く、集団発生が起きやすい。感染研がまとめた15歳以上の患者の報告数は、5月21〜27日で1調査機関あたり0・18人と過去最多を更新し続けている。  感染研の岡部信彦感染症情報センター長は「海外に比べ日本は、はしかは怖い病気だという認識が低く、徹底した対策がとりにくい」と指摘、「感染症の拡大防止には、地域が迅速で、きめ細かい連携を取ることがいかに有効かを示した好例。他の地域も参考にしてほしい」と話している。

(2007年6月5日 読売新聞) <引用記事>http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070605ik0e.htm


感染症というのは@感染源A微生物の量B媒介物C感染経路D微生物の侵入E宿主の6つの因子がすべて必要になります。 感染管理の原則として、感染の成立を防ぐためにはこの6因子のどこかをつぶせば良いという考え方です。

@の感染源を封じ込めることができるのが一番いいのですが、それはなかなか難しいんです。感染症によっては潜伏期間もありますし。ちなみに麻疹の潜伏期間は10〜12日とされています。
A微生物・ウイルスの量を減らすことも難しいんです。
B媒体物、例えば、マラリアなど蚊を媒体として広がる感染症などの場合に、蚊の駆除などが有効になりますが、麻疹の場合、空気感染で人から人へ広がるので意味がありません。
D微生物やウイスルの侵入を阻止するために人間には胃液の酸や、抗体になるのですが、抗体を増やすのは予防接種か以前に罹患することでしか得られません。予防接種してなければ今回のように広がってしまいます。
E宿主=人間を削除することはできませんw

よってC感染経路を遮断することが最も簡単で効果的な方法になります。麻疹は空気感染なので、空気感染予防策をとることで封じ込めできます。 患者の隔離、感染している人としてない人を接触させない。手洗い、うがいを徹底して接触感染を防ぐ。N95マスクで自分が媒体とならない対策。

さらに重要になるのがこの茨城のシステムのような情報共有と連携。どこで拡大しているのか・どこへ移動しているのか・予防接種を受けていない人には迅速に予防接種の施行・予防接種をしたかわからない場合または以前に罹患したことがあるかないかわからない場合は抗体検査を実施し把握する。

私は記事中の「熱があった生徒には欠席を促すなど指導した。調査表を使って発症2週間前からの行動範囲を聞き取り、患者の了解を得て、接触した可能性のある学習塾や習い事の教室などでも注意を呼びかけた。」という部分にかなり関心しました。

私の知る限り、医療従事者のなかでも感染対策に関わっていなければ、ここまで知らないのが現状です。それを地域で連携してこの対応には頭が下がります。 全国でも、このモデル対策を早期に導入してもらいたいです。